健康診断の種類
■電離放射線健康診断 (電離放射線障害防止規則第56条) 放射線業務に従事し管理区域に立ち入る労働者に対しては、雇入れの際または当該業務への配置換えの際およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に、次の項目の健康診断を実施しなければなりません。 (ここには記載いたしませんが、健康診断項目の一部は、省略要件を満たした場合に省略することができます。) 電離放射線の健康診断項目 1被ばく歴の有無の検査 2白血球数及び白血球百分率の検査 3赤血球数及び血色素料又はヘマトクリット値の検査 4白内障に関する目の検査 5皮膚(爪を含む)の検査 〔1〕検査又は検診を行う部位又は項目 健康診断の方法は引き続き、問診及び検査又は検診であるが、検査又は検診を行う部位又は項目を以下のとおり変更すること。 (1)末しょう血液中の血色素量又はヘマトクリット値、赤血球数、白血球数及び白血球百分率 (2)皮膚 (3)眼 (4)その他文部科学大臣*が定める部位または項目(現時点では定められていない) *=平成13年1月6日より中央省庁等改革に伴い、科学技術庁は文部科学省に、科学技術庁長官は文部科学大臣となる。 〔2〕健康診断の省略等 (1) 管理区域に立ち入った後の健康診断について、当該年度の前年度の4月1日を始期とする1年間の線量当量が実効線量当量限度及び組織線量当量限度の10分の3を超えず、かつ当該年度の4月1日を始期とする1年間の線量当量が同じ値を超えるおそれのない者に対する健康診断の省略を認める規定は、改正法令において削除した。これに伴い、健康診断の省略を行った者への記録の交付、記録の保存等を規定した改正前の放射線障害防止法施行規則第22条第3項についても削除した。 ただし、附則により、改正法令の施行前に健康診断の省略を行った者については、改正前の第22条第3項が引き続きその効力を有するので留意すること。 (2) 健康診断の省略規定を削除したので、健康診断のうち問診については全員に対して毎年行うこととする。 〔項目〕 (1)問診 (2)以下の部位及び項目についての検査又は検診 (1)末しょう血液中の血色素量又はヘマトクリット値、赤血球数、白血球数及び白血球百分率 (2)皮膚 (3)眼 ■振動工具(チェーンソー及びチェーンソー以外)健康診断 さく岩機やドリル、チェーンソーなどの、身体に振動がかかる工具を週に1回以上使用 する業務です。使用する工具により、実施すべき頻度が異なります。 チェーンソー等健康診断新しく当該業務に就く際と、以後半年に1回 チェーンソー(手に持つタイプの電動のこぎり)を週に1回以上使用する業務 チェーンソー等以外の振動工具健康診断レッグ式削岩機、チッピングハンマー、リベッティングハンマー、コーキングハンマー、ピックハンマー、ハンドハンマー、ベビーハンマー、コンクリートブレーカー、スケーリングハンマー等 新しく当該業務に就く際と、以後半年に1回、うち一回は冬期 上記以外の振動工具 新しく当該業務に就く際と、以後1年に1回 全身性振動障害: 振動が全身にかかることにより、自律神経系(体調を整える神経)の調子が悪くなり、血圧の上昇や胃腸障害、不眠・めまい・頭痛、内分泌系の異常などがみられることがあります。 局所性振動障害: 振動工具を使う作業では、振動が加わり続けると、手指の血管の収縮が必要以上に起きるようになり(寒い場所や冷たいものに触れたときは特に出やすくなります)血行が悪くなって、手指が蒼白または紫色になり、痛みや冷え、しびれが生じやすくなります(レイノー現象)。 また骨や関節、筋肉に振動が加わり続けることで、変形したり、動かしにくくなったりしやすくなります。その上末梢神経にも振動が加わり続けることで萎縮や麻痺を起こしやすくなるため、手指や肘・腕にしびれやこわばり、触覚・温冷覚・痛覚等の異常、力が入らないなどの症状が生じやすくなります。また、寒冷や疲労がこれらの悪化を進める因子となります。 この状態が進行すると、指が真っ白でしびれて痛い状態が続く「白ろう病」となります。 そのほか、局所性・全身性いずれの場合も、振動の発生源からの騒音による難聴などを 合併していることが多くみられます。よって、振動の発生源によっては、半年に1回の 騒音健康診断も必要な場合がありますのでご参照下さい。 問診及び医師の診察(業務歴の調査・既往歴・自他覚症状の有無と内容)どんな工具をどのように、何年取扱ってきたか、また最近は一回・一日・一月あたりそれぞれどれぐらい取扱っているかなどについてお訊きします。 また、今まで罹った主な病気やけが、手指や肘・腕の自覚症状や、不眠・めまい・頭痛等がないかどうかお訊きし、手指や肘・腕に変形、萎縮、圧痛・触覚・痛覚および振動覚の異常、運動障害、腱反射の異常、爪や皮ふの異常などがないか診察します。 握力および血圧の測定常温での手指の血行や末梢神経機能の検査(爪圧迫テスト、皮ふ温測定)大部分の振動工具の取扱業務は、騒音健康診断も必要な業務にも該当しますので ご参照下さい。 また、新しく振動工具の取扱業務に就く際のみ、手と肘の関節のエックス線検査を整形外科等で受けて頂く必要があります。 ■有機溶剤健康診断 有機溶剤とは?アルコールやエーテル、シンナーやベンジン等のように、燃料として、あるいは塗料や接着剤、 石油化学製品等の原料として、あるいは脱脂剤や強力な汚れ落し等として他の物質(鉱物や油脂など) を溶かす、有機化合物の液体全般をいいます。多くは火をつけると燃えます。またツーンとした臭い がするものが多く含まれます。 工業的に使用されているものだけでも500種類以上あります。 有機溶剤のうち54種類のものについては、人体に有害なことが明らかになっています。 これらを5%以上含むものを使ったり作っている場合は、その溶剤別に出やすい害に合わせた 検査項目の特殊健診を、半年に一度実施することが法律(有機溶剤中毒予防規則)で義務付け られています。 検査項目について教えて下さい問診及び医師の診察(自他覚症状の有無と内容)これは、54種類全てで行います。溶剤別に出やすい症状中心に調べます。 有機溶剤による健康への悪影響には、54種の殆どで共通して出やすいものと、出やすさや重症度が溶剤によって差があるものがあります。 54種の殆どで共通して出やすいものとしては、皮膚や目・鼻などの粘膜への刺激・かゆみ・かぶれが挙げられます。のどの奥の粘膜まで届いて、痛みやせきやたんが出るものもあります。 また、ツーンとした臭いから想像されるような、頭痛やめまい、吐き気も54種の殆どで出やすい症状です。有機溶剤が脳や全身の神経を攻撃するためです。有機溶剤に強くさらされた方や、長く続けている方では、手足にしびれが出たり、筋力が落ちたり筋肉痛が出たりすることもあります。また何となく落ち着かなくなったりいらいらしたり、無気力になったり、寝つきが悪くなることもあります。 また、アルコールで肝臓を悪くしやすいのと同様に、殆どの溶剤で肝機能が悪くなる可能性がありますので、肝臓が悪いときのような症状がないかどうかも調べます。 検尿(たん白)と尿代謝物検査大部分の溶剤は腎臓に影響し、蛋白尿を起こす可能性がありますので、検尿をします。このとき溶剤により、少量でよい場合と、尿を多めに取って頂くようお願いする場合があります。 尿を多めに取って頂く溶剤では、その溶剤にさらされている場合に特別に尿に出る物質(尿代謝物)があります。トルエン→馬尿酸、キシレン→メチル馬尿酸、スチレン→マンデル酸、トリクロロエチレン・テトラクロロエチレン→総三塩化物、へキサン→2,5-ヘキサンジオン等です。またメチルホルムアシドはそのものが尿中に出ます。これらの濃度を調べることで、受診者個人個人がどの程度溶剤にさらされているかわかります。これらが高い場合は、作業環境の空気中の溶剤の濃度や、個人個人の保護具の使い方・作業のしかたに問題がないかを確かめる必要があります。 肝機能検査(血清AST(GOT)・ALT(GOT)・γ-GTPの測定)既に述べたように、殆どの溶剤で肝機能が悪くなり得ますが、溶剤により多少出やすさ や重症度が違います。特に危険性が高い溶剤については、血液検査で肝機能(GOT、 GPT、γ-GTP)も調べます。 貧血検査(赤血球数・ヘモグロビン値の測定)貧血は、出やすさが溶剤によって違います。貧血を起こしやすい溶剤では、血液検査で 赤血球数とヘモグロビン量を調べます。 眼底検査(眼底カメラによる眼底写真)二硫化炭素は、特に視神経への障害の危険性が高いので、眼底検査もします。 |
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